FX ユーロ安？次世代リーダー不在の独政局を巡る先行き不透明感

10月14日の独バイエルン州での与党敗退に続き、先週末28日の独ヘッセン州議会選でもメルケル首相率いる中道右派キリスト教民主同盟（CDU)の得票率は27％と1960年代以降、最低となり、前回投票の2013年当時と比べても11ポイントも下回る冴えない結果となりました。

こうした結果を踏まえ、メルケル首相は今年12月の党首選への不出馬を表明したほか、2021年の次期国勢選挙に出馬せず、独の政界引退を仄めかしています。

しかし、問題はメルケル首相のCDUとドイツ社会民主党（SPD)との連立政権が2021年まで継続することができるか？人気が低下している政権がCDUのメルケル首相が退くことで支持率回復につながるとは思えず、リーダー不在の中で惰性的に政治運営が行われていくことになれば新たな指導者が表れるまでユーロ売りにつながりかねないとも見られます。

今週29日にメルケル首相の後継者とされるクランプカレンバウアー氏のほか、メルケル首相を批判しているシュパーン氏やメルツ氏が党首候補に名乗りを上げました。

しかし、有権者は現状の連立政権に不満を持ち、連立政権ではない変化を求めているという現状を認識しなければ「緑の党」など中道左派が勢力を伸ばすことになるなど独政局を巡る不透明感は一層高まるかもしれません。

こうした中、昨晩発表されたユーロ圏7-9月期GDPは前期比+0.2％と市場予想（+0.4％）を下回り前期（+0.4％）から減速しました。

また、フランスの7-9月期GDP速報値は前期比+0.4％（予想:+0.5％）、さらにイタリアのGDPは前期比0.0％（予想:+0.1％）といずれも予想を下回りました。

こうした結果を受けてイタリアのサルビーニ副首相は「2014年10-12月期以来のGDPの失速で財政拡大の必要性が証明された」と発言したほか、コンテ首相もEUの求めている財政計画の修正をあらためて否定、財政問題を巡るイタリアとEUとの対立が深まることとなりました。

一方、独10月消費者物価指数速報値が前年比+2.4％と2012年2月以来の高い伸びを記録したことからユーロは対ドルで一時1.1382㌦へ反発したものの一時的な動きに留まりました。

結果的にユーロは1.1340㌦を下値に1.1342㌦で昨晩のNY市場の取引を終え、今朝の東京市場でも1.1340㌦台での冴えない値動きが続いています。ユーロは先週末26日に8月15日の1.1301㌦以来となる1.1335㌦の安値を付けていますが、この水準を割り込むと1.1300㌦割れの可能性が高まるかもしれません。

イタリアの財政問題の影響からイタリア債券から独債券へと資金が流れ独国債利回りが低下、さらにドイツの政局不透明感も加わるとユーロは一段と下落するかもしれません。

加えて昨晩、格付け機関S＆Pが英国の離脱が合意無い離脱となればリセッションに陥り、格下げを招く恐れがあると警告したことでポンドは8月16日以来の安値となる1.2695㌦まで下落したこともユーロの対ドルでの反発を抑える一因となっています。

イタリアの財政問題や英EU離脱を巡る不透明感のユーロ圏経済への影響に加え、ドイツの政局を巡る動きが今後増々混迷の度を増すことになればユーロの一段安は避けられそうもないだけに、今後の動向には注意が必要です。